あの頃の心の動きは当時のブログ<April 1,2005> に書いた通り、勤めていた会社の上司に突然「辞めます」と言ってしまったことなのですが(笑)、会社を作ったきっかけを挙げるとするならば、ふたつのことに集約されます。
ひとつ目は、外資系の企業をいくつか転職していた時期に感じていた違和感です。
"仕事をする"ということと、自分本来の"生き甲斐やミッション"とがつながっていないという感覚でしょうか。毎日、利益を上げることのみが目的となっている市場原理に追われていました。特に自分の居場所であったコンサルティング業務の職場では、給与や福利厚生といった待遇と、働くモチベーションは当然ながら一致すべきものだという空気が流れていたような気がしました。でも、ずっともやもやしていました。はたして私にとって待遇だけが、自分を動かす原動力になっているんだろうかと。そんな違和感から脱却したくて、2004年の12月、たったひとりでニュージーランドの長期旅行に飛び出したんです。
まさにこの旅が、ふたつ目のきっかけとなりました。自分と対話するしかない大自然のなかに身を置いたとき、そのとてつもない生命観の中で、「ああ、あらゆる生命はすべて理由があって存在し、そしてつながっているのだ・・・」という今までにない実感を持ったんです。
それは頭で考える共存共栄とは違った次元で、たとえばプレートの隆起と氷河の削取によってできた硬い地盤に、横広がりに根を張り合って支え合う鬱蒼たるブナの森。ブナは風で種子を飛ばすので鳥や虫たちの介在を必要としません。だから森の花々までが白や黄色と控えめで、鳥の鳴き声もほとんどしない静けさです。また、ある種の木はカカポという飛べない鳥に食べられないように、カカポの背の高さを超えるまでは真っ黒で硬い葉を茂らせて森の中を生き抜いていく。そんなふうにひとつひとつのいのちは大自然という過酷な環境の中で精一杯生き、しかも同時にいかにいのちをつないでいくかで関連し合っている。
私たち人間は頭脳を持ち、身体を自由に動かすこともできる分、逆に彼らと同じように自然の一部でもあるということを、どこかに置き去りにしては来なかっただろうか・・・。
でも、その時の私に去来したのは人間悪者説ではなく、自然を信じるのと同じように人間の本質を信じたい、今はいろいろ意味での大きな時代の過渡期なんだという、とても静かな気持ちだったんです。
あ、ほんとですね。でもその時はまだwillwindの構想も社名も無かったんですよ。
ニュージーランドから帰って4カ月、想いが少しずつ発酵していったのでしょうか。2005年4月1日の朝、抜けるような青空から「結局私のやるべきことは、人間がきちんといのちをつないでいくためにも、その根幹である“想い“を次の世代につなげることなんだ」という確信が降ってきたんです。自分が本当にするべきことはなんなのかと、もやもやとしはじめてから1年半が経過していました。
そしてそのまま勤めていた会社に出社するなり上司の部屋をノックして「辞めます」と伝えました。上司は驚いていましたが、実は一番驚いたのは私自身ですね(笑)。事業計画も商品も何もないのに、なんの迷いもなく行動に出てしまった。私の頭がまだ事の事態に追い付いていなくて、上司に理由を説明する声が震えていたのを覚えています(笑)。
それから、想い(will)を風(wind)に乗せて未来につなげる「willwind」という社名を考え、2005年の8月15日に会社を設立しました。登記が8月の中頃になりそうだと思った時、私たち日本人が忘れてはならない大切な日、8月15日を設立日にしようと決めました。多くの人たちの「想い」に恥じないよう、決意と覚悟を持って、きちんとつなげるのだという気持ちでした。
でもね、会社を辞めてから気がついたのですが、最後にたずさわった生命保険という仕事は本来、一番わかりやすい形で「いのちを次へとつなげる」仕事だったんですよね。
中に居た時には、会社案内を彩る立派な「企業理念」と私のモチベーションとがちっともつながっていなかった。お恥ずかしながらピンときていなかったんです。
会社のせいで仕事とモチベーションが結びつかなかったのではなく、自分のミッションが定まっていなかったせいなのだと、今振り返るとわかります。
その後、外から組織を眺める機会を得たことで、よりはっきりと「企業」という有機体の輪郭が見え、その凄さもわかりました。生命保険に限らず、どんな企業でも雇用があり、商品・サービスを生み出す仕組みがあり、社会との関わりがあり、そして社会にそれら商品やサービスが受け入れられてきたからこそ持続してきた。法人という強い生命力の存在をあらためて感じたのです。
そして考えました。自然の一部である人も、人の集まりである企業も、それぞれが持っている意味と本質とにきちんと向き合えたなら世の中はより良くなるのではないだろうか。だとすれば、創業者の想い、先輩たちの想い、壁にかかっている崇高な理念を、働く個人の“生き甲斐”や“心”とつなぐことができたなら、ひとりひとりのモチベーションをもっと深いところから揺り動かすことができるはず・・・。そして受け継ぐ人々がそれぞれの役割を担って、新しい未来を創っていくことができるはずだと。
大企業にいたからこそ、そして今、外から企業を眺めることができるからこそ、「想いを次の世代につなげる」という使命の下、企業に対しては「継承の文化を創っていく」、というミッションが、willwindにはあるんだと思えたんです。
そんなお手伝いができたなら、とても素敵なことだと考えています。
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2. 想いを次の世代につなげる